01 大泉洋(俳優) | 福山雅治30周年スペシャル企画 七人の男が見た「至近距離の真実」
Fukuyama
FUKUYAMA MASAHARU 30th ANNIVERSARY 30周年スペシャル企画 七人の男が見た「至近距離の真実」 30年の間に、福山さんと仕事をしてきたアーティストやクリエーターたちに話をお伺いしました。 福山さんと向き合う中で生まれたさまざまな想いやエピソードが詰まったTRUE STORY。 福山さんの才能を引き出し、運命を変えた(かもしれない)方たちの語りをお楽しみください。
目次
  • 01 大泉洋(俳優)
  • 02 大友啓史(『龍馬伝』演出家)
  • 03 木﨑賢治(「Good night」音楽プロデューサー)
  • 04 千葉幸順(コンサート制作会社社長)
  • 05 萬年里司(音楽プロデューサー) × 06 川上泰司(宣伝プロデューサー)
  • 07 SION(シンガーソングライター)

01 大泉洋(俳優)

福山雅治さんへ 01 大泉洋(俳優)
実は普通の人の感覚を持っている安心感のあるスーパースター 01 大泉洋(俳優) 実は普通の人の感覚を持っている安心感のあるスーパースター

基本的に私は福山さんのことを「先生」とお呼びしていますから、それはもう失礼なんてあっちゃいけない訳ですよ。もうだいぶ前の話になりますけど、ある日お電話をいただきまして。なんでも、ライブで札幌に来ているんだと。普段は地元のイベンターさんに美味しいお店を紹介してもらうんでしょうけど、ツアーも毎回のことともなると、さすがにイベンターさんも手持ちのお店がなくなってくる訳ですよね、それは。なんせあの福山雅治をお連れするんですから。

そこで新たなる情報源として私に白羽の矢が立ったということだったんですね。にしても、いかんせん連絡をいただいたのが遅かったんですよ。北海道とはいえ、ハイレベルなお店になってくるとそりゃあやっぱり数ヵ月前からでないと予約は取れない訳です。にも関わらずですよ、「ぁ、洋ちゃん、来週なんだけど……」と平然とおっしゃる訳です。しかもそのときはこんなふうに言われたんです。「北海道でご飯を食べるのにね、僕がスタッフに聞いたら、洋ちゃんに確認してないって言うから……。それは洋ちゃんに失礼でしょって一喝しましたよ。何をやってんだ君たちはって。ぁ、洋ちゃんに失礼だって」。その~、ま、訴え方といいましょうか? やり方といいましょうか? 巧みですよね。洋ちゃんに失礼だと。それでスタッフに注意したんだと。さあ、いい店知らないかと。そこまでされて渡されるバトンをもらったときのプレッシャーたるやもう。逃げられない状態な訳ですからね、こっちは。「いやいや先生、かしこまりました」って言って探しましたよ。

結局いろいろ考えて、探して、やっぱりここのお寿司屋さんがいいと思うっていう、とっておきを紹介したんですけど、ただ来週だと、席は確保できてもカウンターを貸し切ることができない。もうすでに他のお客さんの予約が入ってますからね。だから正直に申し上げましたよ。「このタイミングですと他のお客さんの予約が入ってますけどいいですか?」って。するとまた平然とこうおっしゃる。「僕は全然、他のお客さんがいても気にしないよ」と。そこで私はもう一度確認したんですよ。「福山さんは気にしなくても、もし他のお客さんが福山さんに気付いて、福山さんのことを気にし始めたら、それは気になりませんか?」って聞いたら、「それは気になる」って(笑)。「じゃダメですよね」って(笑)。で、僕はどうしたかというと、そのお寿司屋さんに電話して、その日にどんなお客さんが来るのかを調べ上げました。そしたら偶然にもその日来るのは業界人だということが判明したんです。北海道のテレビ局の人が来ると。じゃ、それはいったい誰なんだと。北海道のテレビ局の人だったら僕もわかるからと(笑)。で、安全の確認が取れたのでご紹介差し上げたんです。どうしてそこまでやるのかと聞かれたら、それはやっぱり"北海道の王"としては(笑)、北海道すごかったって思ってもらいたい訳ですよ、あの福山さんに。だから頑張っちゃうんです。あるときなんか、「ぁ、洋ちゃん、いま僕はね、紋別にいるんだけどね、どっか美味しいとこない?」と。あのぅ、私もね、王とはいえ北海道のすべてを知ってるかというとさすがにね、紋別の店までは知りませんよ。だけどもう、そこから死ぬ気で探しましたよ。そのとき私、連ドラの撮影中だったんですけどね。その撮影もままならないくらい延々知り合いに電話しまくりましたよ。とにかく紋別の店を探してくれと(笑)。

ノーマルな福山さんが
もう思い出せない(笑)

そんなふうにですね、福山さんと仲良くさせていただいて大変光栄な限りなんですけど、私がテレビでちょこっと言った福山さんの名言が、「スター伝説」なんて一大コンテンツになってお茶の間に浸透するとは夢にも思いませんでしたよ。『ぴったんこカン・カン』ももはや私を呼びたいのか、福山さんの話が聞きたくて呼んでいるのか微妙なところがありますからね(笑)。いまでは本物の福山さんが「スター伝説」に寄っていってるんで、オリジナルの福山さんがいなくなっているという事態を引き起こしていますからね。だから昔からのファンの方々は僕のことを恨んでいるかもしれませんね。「私の福山雅治を返してくれ」と。僕だってもう、初めて会った頃のノーマルな福山さんが思い出せないですもん(笑)。

「スター伝説」がコンテンツ化されることによって、われわれ2人の関係にもねじれが生じてきていますね。なぜかご本人に「新ネタを提供しなきゃいけない」っていう焦りが出てきていますから(笑)。でね、このあいだ福山さんと話したのは、やっぱり名言というのは生もうとして生み出せるものではない訳で、ふとしたところから名言というのは出るものでしょう、と。そうなるとたまに会って2時間くらい一緒にご飯を食べるくらいでは名言は出てこないから、もう連ドラを一緒にやるくらいじゃないとダメなんじゃないかと。そしたら「それはいいね、洋ちゃん。ちょっと動いてみます」っておっしゃって(笑)、慌てましたよ。だって福山さんが動いたら早いだろうし、かなり大きな話になりますからね。僕のスケジュールとか関係なさそうですもんね(笑)。しかもあまりにも動機が不純でしょ(笑)。連ドラが目的じゃなくて、「スター伝説」の名言を採取することが目的で連ドラやるんですから。

も、いろいろね、ねじれてきてるんです(笑)。最初に僕が紹介したお店なんですけど、いつの間にか福山さんしか予約が取れないお店になってる、とかね。そこは、もともと予約の取れない店で、たまたま僕の知り合いの伝手で取れたから、福山さんご一緒しませんか? ってお誘いしたんですよ。だから僕自身もその店の予約は取れない訳です。でもなぜか次から福山さんは自力で行けるようになってるんですよ。「ぁ、洋ちゃん、あそこのお店取れたから今晩どう?」。ってあのいい声でおっしゃる訳ですよ。スー パースターは違います!

そんなスーパースターな福山さんなんですけど、実は普通の人の感覚を当たり前に持ってらっしゃる方なんです。そこが安心できるんですよね。あれだけのスーパースターなのに、一緒にいて安心感がある。

先生、これからもよろしくお願いします。

好きな福山歌

これはね、いろいろありますよ。僕は案外、福山さんが前川清さんに提供された「ひまわり」が好きなんですよね。ふと口をついて出てくるのがこの曲ですね。車の中で聴いて、なんだかんだでテンション上げたいなってときは「追憶の雨の中」。特に男性限定の「野郎夜!!」のときのライブ音源が好きですね(アルバム『福の音』に収録)。と思いきや、「誕生日には真白な百合を」、あれも気づいたときには口ずさんでることがありますね。さらに、サビの盛り上がりの感じなんかは「I am a HERO」もいいですね。福山さんの「ァフゥ~」がたまりませんね。もちろん、「道標」は大好きですよ。「道標」は聴くと泣いちゃうからなぁ。

大泉洋さんへ

洋ちゃんは一緒に居てとにかく気持ちの良い人です。トークが面白いというのは皆様ご存知ですよね。では、そのトークの面白さはどこから来るのか?それはやはり人柄なのかと。"誰一人として人を傷付けない"かつ面白いトーク。あれだけぼやきながら、時に乱暴な言葉使いになりながらも話を聞いている人を不快にさせない。もはや神業と言って良いかと。さらに神業はトークだけにとどまらず、美味しいご飯屋さんのお勧め力。僕が洋ちゃんのレコメンドに絶大なる信頼を置いている理由は、今までご紹介いただいたお店に一つもハズレがないというその正確性もあるのですが、加えて、"美味しい"という基準だけではない情報の3D的奥行きにあります。味が美味しいご飯屋さんにはインターネットや雑誌を見ればたどり着くことができます(予約が取れる取れないは別にして)。しかし、そのお店の導線や個室の間取り、トイレの場所、来店されるお客さんの感じ、スタッフさんの対応などなど、お店と言っても実は知っておきたい情報はたくさんあって、それらすべてコミコミで"素敵なお店"を洋ちゃんはご紹介してくれるわけです。その情報を人に伝えるためには、感受性とトーク力も必要になってくるのは言うまでもありません。洋ちゃんがいかに素敵な感受性の持ち主であるかということが、こういう日常のやり取りからもはっきりと感じ取ることができます。

そしてその感受性は、大泉洋という人間を魅力的な俳優にする源泉となっているのではないでしょうか。僕が洋ちゃんのお芝居を観て感じるのは、まだまだ底知れない深みをお持ちでいらっしゃるな、と。当然ながらこれまでも様々な役を演じられてきて、皆さんを楽しませてくれています。しかし、まだまだ開けていないお芝居の引き出しがあるような気がします。お芝居でも音楽でもそうですが、我々表現者はある程度キャリアを重ねていくと、その人なりの型のようなものができていきます。それがその人の個性や醍醐味"定番の味"になっていくわけですが、洋ちゃんの場合は、"まだ何かある"と思わせる底知れなさが観ている我々を惹きつけているのではないでしょうか。まだまだ僕たちの知らない新しい洋ちゃんを作品で観れることを楽しみにしています。もちろんトークも。そのためにはトークのネタになる僕のエピソードが必要ですよね。また近くご飯お願いします!

福山雅治
目次
  • 01 大泉洋(俳優)
  • 02 大友啓史(『龍馬伝』演出家)
  • 03 木﨑賢治(「Good night」音楽プロデューサー)
  • 04 千葉幸順(コンサート制作会社社長)
  • 05 萬年里司(音楽プロデューサー) × 06 川上泰司(宣伝プロデューサー)
  • 07 SION(シンガーソングライター)